半年ぶりの歯の治療

わたしは虫歯が嫌いである。しかし、虫歯はわたしが好きなようだ。相思相愛なら結婚も考えるところだが、あいにくわたしには妻がいる(妻はわたしにことを虫歯と同じように扱うから、わたしは虫歯なのかもしれない)。

さて、半年ぶりに歯の定期検診に行ってきた。恥ずかしい話、わたしは虫歯で数多くの歯を抜いてきた。抜いたところにはインプラントを入れてある(わたしのインプラント治療については、『歯がなくても大丈夫。わたしの歯磨きしない術』を読んでいただければと思う。

歯石取りのために治療室内のイスに腰掛ける。椅子に座るや否や、レントゲンを撮ろうと言われる。「善良の市民から、レントゲン代をむしり取る気だな」と心の中で思いながら、レントゲン室へお願いしますとの声に「は〜い」と返事をして部屋に入る。

写真を撮り終えてレントゲン写真を見ると、何だか黒い影が写っている。さては、善良の市民から治療費をむしり取る気だなと心の中で呟きながら、大きな口を開ける。

治療中に自分の唾が顔にかかる。自分の唾だからいいようなものも、中年の唾はかけられたくない。わたしは中年である。この時ほど、自分が若い女性ではないことを恨んだ。

黒い影は結局詰め物だったようだ。不安にさせておいて安心させる。わたしから搾取し続ける気だなと心の中で訴えながら「ありがとうございます」と告げ、診察室を後にした。

治療後に、トイレの鏡で自分の歯を確認する。汚れがないきれいな歯である。中年の歯は無条件で汚らしいが、わたしの歯を見る限り、どうやらわたしは中年ではなさそうである。

うちに帰り、さっそく息子に歯を自慢する。「黄色い歯だね」と一蹴される。どうやら、白と黄色の区別がつかないようである。色の勉強を一から始めないといけなくなってしまった。

さて、次の定期メンテナンスも半年後である。それまでに、息子に色の区別をしっかりと叩き込むつもりである。