二転三転する学生の進路

卒業後に就職を目指す目的で日本語学校に入学する学生を担当している。彼らは2年間の間に、企業が求める日本語力を身につけなければならない。

学生も2年目になり、本格的に就職活動を始める時期となった。その前に個人面談をおこなっていく。内容は希望職種や現在のアルバイト状況についてである。

何も問題はなく終わる。ぜひこの調子で頑張ってもらいたいものだ。そのためには、こちらも誠意をもって対応していくから、一緒に就職を頑張っていきましょうと伝える。彼のあの時の目は、希望に満ち溢れた若者の目であった。

さて、2回目の面談。例の彼の番である。「わたしは君のあの時の目を忘れてないぞ。今日は詳しい話を進めていこうではないか」

そんな彼の口から出た第一声は、「専門学校に行きたいです!」。

理由を尋ねると、勉強したいからというが、本音ではもっと遊びたいからであろう。その思いを心にしまい、どんなことを学びたいのかを聞くと、まだわからないとのことなので、自分で調べておくように伝える。

それから3回目の面談。例の彼の番である。彼から、専門学校でどんな勉強をしたいのかを聞く日である。恥ずかしがらずに、言ってごらんなさい。

そんな彼の口から出た第一声は「働きたいです!」

専門学校の入学金を見て、急に現実に戻ったのかもしれない。もしくは、両親が入学金の工面ができなくなったのかもしれない。

自分の進路は迷うものである。遠回りしたようだが、この遠回りが近道につながるのだよ。わたしは、誰かが言っていそうな名言を心に刻み、1回目の面談と同じ内容で話を進めていく。

もう専門学校に対する迷いはないのか、就職のための指導が始まるなどのことを伝える。彼の就職に対する意志を確認して、その日の面談は終わった。

それからしばらくして、校内で就職説明会が実施された。クラス全体に案内をし、当日の注意事項を説明する。しかし彼は説明会に参加しないと言うのである。気になった企業がなくても、話を聞いているうちに興味をもつこともあるから参加するように促していく。

そんな彼の口から出た第一声は、「専門学校に行きたいです!」。